◆月読尊(ツクヨミノミコト)
神代文字:天日草文字×大神神字
【御利益】
光神。交通/航海・安全/守護・家内安全・豊作/豊漁・酒造/医薬・産業振興・所願成就。
※月の神で、三貴神の長兄。静かな神のイメージがありますが、実は明るい神で、とてもイタズラ好きな神です。
【祝詞】
あめうるし くにうるしつつ ひかげなす つきてるかみの すめらおおかみ
【解説】
イザナキが産んだ最も尊い神とされる「三貴子」の一柱。最高神アマテラスの弟神であり、最強の神「スサノオ」の兄神とされています。アマテラスの(陽+)に対して(陰-)を司ります。「予知」に長けた神で「夜の世界を守護する神」です。静かな神だというイメージが文献には多いですが、遊び好き・イタズラ好きで、明るく楽しいことが好きな神です。(別名:月弓尊、月夜見尊、月読神、等)
ツクヨミは皇大神宮の別宮・月讀宮、豊受大神宮の別宮・月夜見宮、月読神社、月讀神社、月山神社、賀蘇山神社、西寒田神社などでお祀りされています。日本書紀・第五段第十一の一書では、アマテラスからウケモチ(保食神)と会って御饌(みけ=アマテラスの食事のこと)の相談をするようにとの依頼を受けたツクヨミが、天から降ってウケモチのもとに赴くシーンが書かれています。この項で、ウケモチはツクヨミへの饗応として口から食事を吐き出したのですが、ツクヨミはそれを見て「けがらわしい!」と怒り、問答無用、その場でウケモチを剣で刺し殺したとされています。アマテラスはこのツクヨミの凶行を知ると「汝悪しき神なり(=そなたは悪い神だ!)」と怒り、この時から、太陽神「アマテラス」と月光神「ツクヨミ」とは仲が悪くなったため、一日一夜隔て離れて暮らすようになったと書かれています。古文献と併せて検証すると、ちょっと剣で脅すつもりだったのが誤って殺してしまった、というのが真相のようです。
ここだけをツクヨミの史実として読めば、三貴子とはいえツクヨミは古代の人々にあまり良いイメージが持たれていなかった神なのかもしれません。ですが悪神というわけではありません。なぜならば古来より、悪霊・悪魔・悪鬼・悪神や、妖怪・化物たちが活動するのは「夜」が多いとされていました。神々への信仰心が薄れつつある文明社会では、夜の時間を邪悪に支配されることが古来よりもさらに多くなってきてもいるのです。ツクヨミはこの「夜」を「邪悪」から守護することを使命としている神でもあります。善なる者たち、聖なる日本国、そして神域を護らねばならない、誰に知られることが無くとも絶対に護らねばならない、そんな気持ちを強く持って「夜の守護神」の役割を果たしてきた神々の代表です。自らの短気とおっちょこちょいな勘違いによりアマテラスと仲が悪くなっても、密かに夜の世界を悪から守護している英雄神なのです。仮に、夜の世界が邪悪に侵されるとどうなるのか。例えば、ある日を境に夜な夜な悪人が善なる人々を襲ってくるようになったとしたら。悪しき魂に侵された人々により、銃弾や爆弾が飛び交う夜になったとしたら。家族の団欒もなく、夫婦の語らいもなく、人々は怯えて暮らさねばなりません。そのようなことが無いように、誰に知られることもないまま「夜」を守護している神こそがツクヨミなのです。
ただ、ツクヨミは本来「たいくつ」な日々や汚い「モノ・コト」が大の苦手で大嫌い。そそっかしくて、イタズラ好きな子供のような一面もあります。そんなツクヨミが上機嫌になり、姉神アマテラスと仲良くなるように、実は私たちにもできることがあります。中秋節(童謡‐十五夜)、中秋の名月、月見団子に月見そば、ツクヨミは名を思い出してくれるだけで嬉しいのです。夜を受け持つ神にとって平時は「たいくつ」なのです。ですので、新月・満月はもちろん、三日月がキレイな時でもいつでもよいので、月を見かけたら前述のツクヨミ「祝詞」を胸の中で念じる。これだけでとても喜んでくれます。
左上:ツクヨミ(神楽)
上中:月によって「夜」が守護される
右上:月読宮の剣祓
右下:三重県・伊勢市の月読宮入口
左下:イザナギ・イザナミと共に