- 自衛隊×「赤飯」の復活を推奨したい -

2024/03/01 

 

突然だが、今回のコラムでは「自衛隊員の食事」について記しておきたい。

じつは先日、石川県・能登の被災地支援活動から一時的に戻ってきた後輩と食事をする機会があったのだが、被災地の現状を聞くと震災前の状態まで復興するにはけっこうな時間がかかるようだ。

 

そんな被災地でなんといっても「ありがたい」のが、自衛隊の存在である。このことは読者の皆さんも理解されていることだろう。

 

ところが、である。

 

彼曰く「自衛隊員が食事をしているところを一度も見なかった」という。

 

不思議に思い、元陸上自衛隊のレンジャー部隊で教官をしていたという方に「どういうことが考えられるのか?」と聞くと、なんとも残念でならない話を聞いてしまった。

 

2011年、東日本大震災の復興で向かった先で。自衛官数名が缶メシという「赤飯缶」を現場で食べていたら「赤飯とは何事だ!」「お祝いか?」「不謹慎だぞ!」などと、浅はかな者たちからクレームがあったんだ、と。それからというもの、自衛隊では災害派遣時の食事を「隠れて食べる」ということにしたんだ、と。

 

しかも、そのクレーマーたちは被災者だけではなく、どこの誰ともわからない連中もいたというではないか。

 

「赤飯は栄養価が高いから戦闘食に採用された」ということを知らずに、缶詰の中身が「赤飯だったから」と災害派遣で来てくれた自衛隊員にクレームをつける、なにもわかっていない者たち。

 

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もしタケミカヅチであれば、その者にはピンポイントで「カミナリ」を直撃で落とすかもしれない。

 

それでも隊員たちは「我々が働く時、そこには不幸がある。だから驕ってはならないのだ。」と、任務に励んでいるのである。

 

赤飯は「もち米100%」で豆や塩を含んでいるため栄養価が高いのである。腹持ちが良く、自衛隊員たちにとっては推奨すべきメニューであった。しかも自衛隊員は缶詰に入った冷たい赤飯を食べていただけである。

 

いったい、なにが不謹慎なのか!?

 

前述の元レンジャー教官の方も、隊員たちが災害派遣の時にトラックの幌の中で食事をする姿を見るたびに「こんなことはおかしい!」と声を上げたいのを我慢したことは数えきれないとのことであった。

 

それでも、彼らは「被災者の中には食事が行きわたっていない人だっているかもしれないのだから、それに対する配慮だ」

 

などと、思っている。

 

陸上自衛隊では、赤飯の缶詰が東日本大震災の災害派遣を機に完全廃止されたという。理由がなんと、前述の「不謹慎論」に対する配慮だというから、さらに驚きである。

 

頭がどうかしている者たちからのクレームで、こんなことが決まるなどあってはならない。この決定をした者はモラルの感覚がどうかしているのではないか。

 

たしかに赤飯というと日本人なら「祝い事の席で食べるめでたいもの」というイメージを持っている人は多い。しかし、栄養価が高いという理由から隊員に配給されていた赤飯を廃止する。まったく、おかしなことである。

 

被災地で活動する自衛隊員たち。

 

自衛隊の戦闘糧食である缶詰、いわゆる「缶めし」の中でも赤飯は腹持ちが良く、ハードな活動をする隊員にとってはありがたい。

 

「こんな時に赤飯とは何事だ!」

 

悪気があるわけではないのかもしれないが、陸自はその後、赤飯の缶詰を廃止する決定をした。

 

現実的には今後も災害時に被災者が自衛隊を目にすることはあるだろう。それを考えれば、言われなくてもいい批判を避けるため、赤飯ではないなにか別のもので、厳しい訓練などで隊員がおなかを満たすことのできるものに代えようということになったのは、組織論では妥当なのかもしれない。

 

だが、しかしである。我々日本人は、それでいいのか。 

 

自衛隊員は、訓練を受けたエキスパートではあるが、それ以前に彼らは人間である。だからお腹が空いたら食事をするのは当然である。にも関わらず「自衛隊員だから」とクレームをつける。

 

こんな連中は「神」だって助けたくない。

 

アメリカでは、軍服を着た軍人をカフェで見かけると、ほかの客がその人の勘定を済ませていってくれることがある。それは災害などの非常時に国民を守ってくれる軍隊への尊敬の念の表れである。

 

今回のコラムは、驕らず、懸命に復興や災害支援活動にも励んでくれている自衛隊員の食事のことである。

 

みなさんにも、ぜひ一考していただきたい。

 

 

秀麻呂